Sky Sports
アルテタの新契約が意味する「第5段階」
イングランドサッカー界で最も長く同じクラブを率いている監督となったミケル・アルテタが、アーセナルとの新契約にサインした。
アルテタはこれまでにアーセナルをプレミアリーグ王者へと導いてきたが、新たな契約は彼のプロジェクトにおける次の段階の始まりを意味するのだろうか。そして、さらなるタイトルを獲得し、アーセナルのレジェンドであるアーセン・ベンゲルを上回る存在になれるのだろうか。
スカイスポーツでは特別ポッドキャストを通じて、ローナ・ウォーカー、ゲイリー・コッタリル、ニック・ライト、サム・ブリッツがアルテタの新契約について議論。これまでの歩みを振り返りながら、アーセナルを長期的な王朝へと導くうえで待ち受ける課題を分析した。
アルテタがアーセナルのアイデンティティーを変えた
ニック・ライトは、2019年にアルテタが就任して以降、アーセナルはクラブ内外を含めて別のチームになったと指摘する。
「2019年当時と比べれば、クラブは見違えるほど変わった。もちろん全員による努力の結果だが、その中心にいたのがアルテタだった。彼はこの6、7年間で数少ない一貫した存在の一人だ」
アルテタはアーセナルを再び欧州のエリートへと押し上げ、現在ではタイトルを獲得し、チャンピオンズリーグでも継続的に終盤のラウンドへ進出するチームへと変貌させた。
もちろん、まだ完璧ではない。今季のブライトン戦がその証拠でもある。
しかし、その試合での敗戦が大きな驚きとなったのは、アーセナルにとってあまりにも珍しい出来事だったからだ。プレミアリーグで3点差の敗戦を喫するのは3年以上ぶりだった。
ライトは、こうした「負けにくいチーム」になったことこそ、アルテタが作り上げた基準の高さを示していると語る。
競争力こそアルテタが植え付けた最大の変化
アーセナルはかつて、相手にフィジカル面で押し込まれ、試合を支配されることも少なくなかった。
しかし現在のチームは、極めて競争力が高く、最後まで相手を追い続けるチームになった。
ライトは「彼らは非常に倒すのが難しいチームになった」と評価し、これこそアルテタがチームに植え付けたアイデンティティーだと説明する。
現在のアーセナルには、激しい競争心と粘り強さが備わっている。それは監督自身の性格や仕事への向き合い方が、そのままチームに反映された結果でもある。
アルテタは単に戦術を導入しただけではなく、自身の価値観そのものをチームへ浸透させてきたのである。
アルテタが掲げた5段階のプロジェクト
アルテタがアーセナルに就任した当初、クラブをイングランドの頂点へ戻すための「5段階の計画」を掲げていたことはよく知られている。
サム・ブリッツによれば、第1段階は「文化を作ること」だった。
就任直後のファーストチームのミーティングでは、選手たちが部屋に入ると、椅子やテーブルが乱雑に置かれていたという。
そこでアルテタは「これがイングランドサッカーから見たあなたたちだ。少しずつ変えていこう」と選手たちに伝えた。
まずはクラブの文化そのものを変えることから始めたのである。
第2段階は、必要な選手を獲得することだった。
ガブリエウ、ベン・ホワイト、アーロン・ラムズデールらの加入は、アルテタが求める選手像を明確に示すものだった。
第3段階は挑戦、第4段階は優勝
第3段階は「挑戦すること」だった。
ガブリエウ・ジェズスとオレクサンドル・ジンチェンコが加入した時期と重なり、アルテタ自身もこの2人について「私たちの世界を変えた」と表現していた。
彼らの加入によって、アーセナルは再びタイトルを争えるチームへと成長した。
そして第4段階が「勝つこと」、つまり最後の一線を越えてタイトルを手にすることだった。
その段階と時を同じくして、練習場で人気者となった犬「ウィン」も登場した。そしてアーセナルは昨季、ついにプレミアリーグのタイトルを獲得した。
文化を変え、必要な選手を集め、タイトルを争い、そして実際に優勝する。
アルテタのプロジェクトは、ここまで4段階を完了したことになる。
最終段階は「王朝」の構築
そして現在、アルテタは第5段階へと進もうとしている。
そのキーワードは「D」である。
アーセナル関係者なら、この「D」が何を意味するのか分かるだろう。
それは「Dynasty」、つまり「王朝」である。
新たな契約を結んだタイミングが、まさにこの第5段階への移行と重なっていることは非常に興味深い。
一度タイトルを獲得するだけではなく、継続的にタイトルを獲得し、長期にわたってイングランドの頂点に君臨するチームを作ること。それがアルテタにとって次の目標となる。
ベンゲルの偉業をアルテタは超えられるか
アーセン・ベンゲルは、アーセナル史上最高の監督として今なお多くの人々から評価されている。
ゲイリー・コッタリルは、ベンゲルのほうがアーセナルでのスタートは速かったとしながらも、アルテタには時間という大きな武器があると指摘する。
アルテタは現在44歳で、今回が4度目の契約となる。
一方、ベンゲルがアーセナルの監督に就任したのは47歳だった。
つまり3年後、アルテタがアーセナル在籍10年を迎えたとしても、年齢はベンゲルがアーセナルの指揮官になった当時と同じになる。
コッタリルは、ベンゲルの獲得したタイトル数に迫ることがアルテタの野望の一つになるだろうと指摘する。
新契約が今後も続いていくのであれば、アルテタにはベンゲルの記録に挑戦するための十分な時間が残されている。
次の世代交代がアルテタ最大の試練に
一方で、長期政権を築くうえで最大の試練となる可能性があるのが、次のチーム再構築だ。
ブリッツは、アルテタが2029年までアーセナルを率えていれば、リバプールでのユルゲン・クロップの在任期間を超えることになると指摘する。
さらに2030年まで続けば、マンチェスター・シティでのペップ・グアルディオラの在任期間も上回る。
アルテタはクロップやグアルディオラより若く、これが初めての監督職でもあるため、長期的に指揮を執る余力は十分にある。
しかし、クロップとグアルディオラを苦しめたのも、チームの再構築だった。
現在のアーセナルの主力選手の年齢を考えると、2029年にはガブリエウが31歳、マルティン・ウーデゴールが30歳、デクラン・ライスが30歳、カイ・ハフェルツが30歳、ダビド・ラヤが34歳になる。
この5人はいずれもアルテタのプロジェクトの中心を担っている選手たちだ。
しかし数年後には、彼らの後継者を考えなければならない時期が訪れる。
アルテタはその段階で、再びチームを大きく作り変え、新しいアーセナルを構築できるのか。
そこが長期政権の大きなポイントになる。
アルテタの攻撃サッカーは誤解されている?
アーセナルの攻撃面については、ファンからさらなる改善を求める声が多い。
しかしライトは、アルテタがどのようなチームを作ろうとしているのかについて、やや誤解があると指摘する。
アーセナルはタイトル獲得に向けてセットプレーを重視し、守備的な側面を強めた。それは事実だ。
しかし、その大きな理由の一つは負傷者だった。
最も効果的な攻撃陣をピッチに揃えられなければ、流動的で攻撃的なサッカーを展開することは難しい。
そのためアルテタは、勝利の可能性を最大化するために別の強みを伸ばしたのである。
実際、ハフェルツ、ブカヨ・サカ、ウーデゴールがシーズンを通してフィットしていた最後のシーズン、アーセナルはクラブ記録となる91ゴールを記録した。
これはベンゲル時代のどのアーセナルよりも多い数字だった。
アルテタは攻撃力を意図的に捨てたわけではない。
状況に応じて戦い方を変えたのであり、むしろ現実的な指揮官としてチームを適応させてきたのである。
アルテタとモウリーニョに共通する「非情さ」
アルテタとジョゼ・モウリーニョの共通点として挙げられるのが、「非情さ」である。
コッタリルによれば、両者は選手に対して非常に厳しい判断を下すタイプだという。
アルテタはガブリエウ・マルティネッリやガブリエウ・ジェズスに対しても、必要と判断すれば厳しい決断を下してきた。
モウリーニョも同様に、選手が期待された役割を果たせなかった場合、年齢や姿勢などを考慮したうえで、どれほど個人的な関係があったとしても選手をチームから外すことがある。
アルテタは審判や判定に対しても厳しい姿勢を見せるようになっている。
判定や審判への批判という点では、アルテタは徐々に「小さなモウリーニョ」のようになっている。
新契約はアーセナル王朝へのスタート地点
アルテタはすでにアーセナルをプレミアリーグのタイトルへ導き、クラブの文化、選手構成、競争力、そして勝者としてのメンタリティーを変えてきた。
しかし、プロジェクトはまだ終わっていない。
これまでの4段階が「文化」「選手」「挑戦」「優勝」だったとすれば、次に待っているのは「王朝」の構築である。
長期政権を築くには、主力選手の世代交代という大きな課題も待ち受けている。
アルテタがベンゲルの偉業にどこまで迫れるのか。そして、一度のタイトルではなく、継続的にトロフィーを獲得するアーセナルを作り上げられるのか。
新契約は、その壮大な第5段階へ向けた新たなスタートとなる。
今回も、**元記事の論点を維持しつつ、日本語の記事として読みやすいように段落構成を整理**しています。



コメント