BBC
8月、トラブゾンスポルに加入したモハメド・サラーが、4万人収容のパパラ・パークでファンから熱烈な歓迎を受けた。
同じ週末、アイルランドのドロヘダ・ユナイテッドは、リーグ戦でゴールウェイと対戦し、約5000人の観客が見守るなか、0-0で引き分けた。
それぞれ異なる規模と環境で活動する両クラブだが、木曜日にはトルコ北東部、黒海沿岸の街トラブゾンで親善試合を開催する。両クラブを結びつけてきた約20年にわたる特別な関係が、ついにピッチ上で実を結ぶことになる。
両クラブの関係が始まったのは2006年。トラブゾンスポルのオンライン掲示板で、数人のファンがアイルランドにある小さなクラブ、ドロヘダ・ユナイテッドの存在に気づいたことがきっかけだった。
ドロヘダのエンブレムには、トルコ国旗にも描かれている星と三日月が採用されていた。さらに、クラブカラーもトラブゾンスポルと同じ臙脂色と青だったことから、ファン同士の交流が始まった。
ドロヘダのライアン・ウォーガンCEOは、英『BBC』の取材に対し、当時の経緯を振り返っている。
「2006年、トラブゾンスポルのオンライン掲示板で、数人のファンが星と三日月を掲げる小さなアイルランドのクラブがあることに気づいた。それらは当然、トルコ国旗のシンボルでもある」
「そこから、クラブカラーも臙脂色と青であることが分かり、両クラブの間でメッセージのやり取りが始まった」
こうして生まれた交流は、単なるファン同士のつながりを超え、クラブ間の友好関係へと発展していく。
両クラブの交流の背景には、アイルランドとトルコの歴史的な関係もある。
両国のつながりは19世紀にまでさかのぼる。アイルランドで大飢饉が発生した際、オスマン帝国が人道支援を実施。当時のオスマン帝国のスルタンは、アイルランドに1000ポンドを寄付したとされる。
また、2026年はアイルランドとトルコが外交関係を樹立してから75周年に当たる。
こうした歴史的な背景も、両クラブの友好関係をより特別なものにしている。
2008年、ドロヘダは経営危機に陥り、アイルランドにおける会社更生手続きに相当する管理下に置かれた。リーグ戦では勝ち点10を剥奪される厳しい状況に追い込まれた。
この苦境を知ったトラブゾンスポルのファンは、ドロヘダに手紙を送り、現金を同封して支援した。
その2年後の2010年、両クラブは正式に姉妹クラブとなった。さらに、2013年にはダブリンで記念試合を開催する計画も持ち上がった。
しかし、当日は試合開始のわずか1時間前に猛烈な豪雨が発生。ピッチが使用不可能と判断され、試合は中止となった。
ウォーガンCEOは当時の状況について、次のように語っている。
「トラブゾンスポルは試合をするためにアイルランドまで来てくれた。しかし、キックオフの1時間前に異常な豪雨に見舞われた」
「スタッフは入場ゲートでチケットを読み取る準備をしていたが、試合は開催不可能と判断され、トラブゾンスポルは試合を行えないまま帰国することになった」
それだけに、今回の親善試合は長年待ち望まれてきた一戦となる。
9月2日、ドロヘダが親善試合の開催をSNSで発表すると、トラブゾンスポルのファンから大きな反響が寄せられた。Xへの投稿は50万回以上閲覧されている。
ドロヘダのSNSフォロワーの約30%はトルコからのものであり、アイルランド国内のフォロワーの割合を上回っているという。
両クラブの交流は、インターネット上だけにとどまらない。
ドロヘダの試合会場では、トラブゾンスポルのユニフォームや旗を目にすることも珍しくない。トルコのファンがスタジアムを見学するためだけに、平日にクラブを訪れることもある。
そのなかの1人が、ドロヘダ郊外に住むトラブゾンスポルのファン、ジャフェル・ベクタシュだ。彼は地元に移住して以来、ドロヘダの試合を欠かさず観戦している。
移住当初、トラブゾンスポルのユニフォームを着て街を歩くと、地元住民の目を引き、店舗で割引を受けることもあったという。
今回の親善試合では、ドロヘダのファンも約4700キロ離れたトルコへの遠征を予定している。現地へ向かうのは、30〜35人ほどのサポーターになる見込みだ。
トラブゾンスポルのファンのなかには、遠征してくるドロヘダのサポーターに自宅を提供すると申し出る人も現れている。
そして、もう1つの注目点がサラーの出場だ。
サラーは火曜日に行われたアフリカネーションズカップ予選の南スーダン戦に向けたエジプト代表メンバーから外れていた。人工芝での試合を理由に招集を見送られたと報じられている。
そのため、今回の親善試合に出場するかどうかは不透明だ。
それでも、ウォーガンCEOはサラーがスタジアムに姿を見せるだけでも特別な意味があると語る。
「彼がメンバーに入らないとしても、スタジアムにいる姿を見られるだけで信じられないほど素晴らしいことだ」
「トラブゾンスポルはここ数回の移籍市場で素晴らしい補強を実現し、限界を押し広げてきた。彼らと対戦できることは本当に素晴らしい」
サラーが出場するかどうかにかかわらず、この試合は両クラブにとって特別な意味を持つ。
オンライン掲示板での小さな交流から始まり、経営危機での支援や姉妹クラブの締結を経て築かれてきた20年の絆。トラブゾンで開催される今回の親善試合は、サッカーが国境を越えて人々を結びつけることを象徴する一戦となる。



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